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電子回路A 定期テスト対策(全範囲)
100点チェックリスト
2 [dB・フィルタ]
☐ 電圧・電流・電力利得をdBで書ける(係数20か10か)
☐ 多段増幅の利得はdBの足し算になる理由を言える
☐ LPF/HPFの を回路から導出できる
☐ ゲイン をdBで導き、ボード線図(折線近似)を描ける
☐ カットオフ周波数 を導ける
☐ カットオフでゲインdB・振幅・位相と言える
☐ dB/dec と dB/dec の傾きを区別できる
☐ BPFがLPF+HPF、負荷でが変わることを説明できる
[半導体]
☐ 真性/p型/n型の構造とキャリアを説明できる
☐ 多数・少数キャリアを区別できる
☐ (質量作用則)で少数キャリア密度を計算できる
☐ バンド図で ・・伝導帯・価電子帯を説明できる
☐ 温度↑でキャリア↑・抵抗↓(負の温度係数)を言える
[ダイオード]
☐ 空乏層・内蔵電位のでき方を説明できる
☐ 整流作用と がV下がる理由を言える
☐ 半波/全波整流の波形を描ける
☐ 負荷直線で動作点を求められる
☐ 小信号等価回路(動作抵抗 )を導ける
☐ 結合C付き回路で直流・交流等価回路を描き分けられる
☐ 多ダイオード回路で各枝の電流を求められる
☐ 降伏・ツェナー・LED()を説明できる
[トランジスタの構造]
☐ バイポーラ(電流制御)/FET(電圧制御)を区別できる
☐ 拡散長 (密度が)の意味を言える
☐ npn構造 、ベースを薄くする理由を言える
☐ 動作原理(EB順方向・CB逆方向、4ステップ)を説明できる
☐ 回路記号(矢印=エミッタ、npn/pnp)を描ける
☐ , から を導ける
☐ エミッタ/ベース/コレクタ接地の入力・出力端子を言える
[静特性と動作点]
☐ 入力特性・出力特性・伝達特性の3つを軸名つきで描ける
☐ 入力側の負荷直線 を立てて を読める
☐ 出力側の負荷直線 を描いて動作点を出せる
☐ 活性領域と飽和領域の違いを言える
☐ アーリー効果が何を引き起こすか言える
☐ 出力が逆位相になる理由を説明できる
☐ 動作点が高すぎ・低すぎのときどちら側が潰れるか分かる
[バイアス回路]
☐ 固定バイアスが不安定な理由を から言える
☐ 電圧帰還バイアスの負帰還ループを矢印で書ける
☐ 電流帰還バイアスの安定化ループを6段階で書ける
☐ ブリーダ電流 ベース電流 とする理由を言える
☐ を の分圧で出し まで一本道でたどれる
[増幅回路の設計]
☐ 設計手順1〜9を順に言える
☐ から を決められる
☐ 低域カットオフから を逆算できる
☐ E6系列に丸めたあと逆算して仕様を確認できる
[等価回路とhパラメータ]
☐ 小信号等価回路が使える2条件を言える
☐ T型等価回路の と の関係が書ける
☐ hパラメータの2式を書ける
☐ の意味と単位を言える
☐ 静特性のどの傾きがどのhパラメータか対応づけられる
☐ 簡易型()の等価回路を描ける
[小信号解析]
☐ 直流電源とコンデンサを交流で短絡して等価回路に描き替えられる
☐ エミッタ接地の を導出できる
☐ があると になる理由を言える
☐ 負荷 をつないだときの の変化を式で言える
☐ コレクタ接地(エミッタフォロワ)の4量を導出できる
☐ ベース接地の4量を導出できる
☐ 3接地の比較表を空欄から埋められる
☐ スピーカを鳴らすのに2段必要な理由を説明できる
出題型の地図(過去問2年分から)
| 問 | 配点 | 型 |
|---|---|---|
| 問題1 | 20点 | 半導体の穴埋め。真性/n形/p形・ドナー・拡散・空乏層・固定電荷・V・電子雪崩降伏。必須問題。 |
| 問題2 | 20点 | 電流帰還バイアス回路の完全解析。直流バイアス 小信号 クリップしない入力振幅 負荷 での消費電力。必須問題。 |
| 問題3 | 10点 | 静特性グラフ+負荷直線から動作点 を読み、 を計算。 |
| 問題4 | 10点 | コレクタ接地の小信号等価回路を描き を導出。 |
| 問題5 | 10点 | ○×5問。ホールの移動度、可変容量、エサキダイオード、利得と帯域幅、動作点と飽和領域。 |
| 問題6 | 10点 | ダイオードAND回路の出力電圧表(理想ダイオードとV降下の2列)。 |
| 問題7 | 10点 | 記述。出力に をつなぐと電圧が出ない理由と対策(インピーダンス変換)。 |
| 問 | 配点 | 型 |
|---|---|---|
| 問題1 | 10点 | 半導体の穴埋め10箇所。必須問題。 |
| 問題2 | 10点 | ダイオードの負荷直線・動作抵抗 ・交流等価回路・ゲインdBまで一気通貫。 |
| 問題3 | 10点 | 多ダイオード回路。理想ダイオードの場合と/V降下の場合の枝電流。 |
| 問題4 | 10点 | ○×5問。不純物濃度、n形の高速性、集積化と寄生容量、npnの対称性、質量作用則。 |
| 問題5 | 10点 | RCフィルタ。LPF/HPF判別・ 読み取り・ 決定・位相差・ に置換。 |
2年分を並べると出題の骨格が見える。半導体の穴埋めは毎回必須問題、負荷直線は毎回出る (ダイオードでもトランジスタでも同じ手順)、記述は「なぜそうなるか」を一文で言い切る型。 選択問題では、計算が一本道のバイアス回路・負荷直線・フィルタを優先し、 記述と○×で取りこぼさないようにするのが安全。
頻出公式チートシート(前半:dB・フィルタ・半導体・ダイオード)
2 dB表示(常用対数・底10)
,
(電力だけ係数10)
倍率と dB:, , dB
LPF(R直列・C並列)
,
(遅れ)
HPF(C直列・R並列)
,(進み)
共通:,
半導体
質量作用則:,
(温度↑で抵抗↓)
Si:, (300K)
ダイオード
簡易型(Si):順方向で 一定
負荷直線:(直線と特性曲線の交点が動作点)
小信号:
LED:,
トランジスタの構造(バイポーラ)
バイアス:EB間=順方向、CB間=逆方向(npn/pnp共通)
KCL:
(ベース接地電流増幅率, )
(エミッタ接地)
拡散長:(になる長さ)
頻出公式チートシート(後半:増幅回路・小信号解析)
| 項目 | 式・値 |
|---|---|
| 入力側の負荷直線 | |
| 出力側の負荷直線 | |
| 分圧バイアス | 、、、 |
| hパラメータ | 、 |
| 簡易型 | |
| エミッタ接地(あり) | 、 |
| エミッタ接地(なし) | 、、、(を除く) |
| コレクタ接地 | 、、、 |
| ベース接地 | 、 |
| 負荷 の影響 | 、 |
| 低域カットオフ | |
| E6系列 | |
| dB換算 | $A[\mathrm{dB}]=20\log_ |
数学の道具箱(このプリントで黙って使う数学)
計算問題(dB・RCフィルタ・小信号)で当たり前のように出てくる数学を先にまとめる。 本文の計算で詰まったらこの2つの道具に戻ればよい。
道具1:常用対数 (dB計算で必須)
は「10を何乗したら になるか」という数。 例:(だから)、、、。
増幅の利得は各段のかけ算だが、をとると足し算になる。これがdBを使う最大の理由。
と分解して性質を使う:
(ゲインがより小さい=出力が小さくなる、だからdBはマイナスになる。)
dB、dB()、dB、dB。 電圧・電流は、電力だけ。
道具2:複素数と (交流のインピーダンス)
交流では電圧・電流が時間で揺れて、位相(タイミング)もずれる。 これを複素数1個で表すと、コイルやコンデンサも「複素数の抵抗(インピーダンス)」になり、 オームの法則・直列並列・分圧がそのまま使える。
、つまり 。よく使うのは (分母分子にをかけて )。
抵抗は 、コンデンサは 、コイルは 。 コンデンサは高周波ほど通しやすい(大で が小さい)、コイルは逆、と整合する。
ゲインは「出力の振幅が入力の何倍か」。 複素数の大きさがその振幅で、実部と虚部から
だから、たとえばLPFで出てくる式は
分母 は実部・虚部なので、虚部を2乗してルートの中に入れるだけ。 位相のずれが知りたいときは別に で出す。
ゲイン=大きさ、位相=角度。フィルタの計算は「①インピーダンスで分圧の式 → ②大きさをとっての式 → ③でdB」の3手順。 ②で虚部を2乗し忘れる・①の分圧で出力をどの部品の電圧にするか間違えるのが二大ミス。
dB(デシベル)表示
電子回路では利得(ゲイン)をdBで表す。電圧・電流利得は、電力利得は。 は常用対数(底10)。電力は電圧の2乗に比例()するので、 となり係数が20になる。
多段増幅では総合利得は各段の積。をとると足し算になるのが便利(の計算が不安なら道具1へ):
電力だけ係数が10。「電圧/電流=20、電力=10」を取り違えると配点を落とす。 はdB、はdB(カットオフで多用)。
RCフィルタ回路
不要な周波数成分を取り除く。LPF=低域通過(高周波ノイズを除去)、HPF=高域通過(直流成分を除去)。 用途はAC/DCコンバータ、ノイズカット、直流成分除去。
LPFとHPFの回路
[2pt] Low-Pass Filter (LPF):低域通過
High-Pass Filter (HPF):高域通過
LPFの伝達特性の導出
正弦波を仮定。コンデンサのインピーダンスは 。直列回路なので電流は
出力はC両端の電圧だから
最後の大きさ(の式)は道具2そのもの:分母 の実部・虚部 を にしただけ。
. 位相 (位相は遅れる)。
3つの領域で考える。
: (平坦)。
: 。が10倍で、すなわちdB/decade(dB/oct)。
: 。ここが折れ点=カットオフ。
カットオフ周波数:,.
HPFの伝達特性の導出
出力はR両端の電圧。分圧で
. 位相 (位相は進む)。 低域でdB/decade、でdB、高域でdB。
まとめ表とBPF
| フィルタ | ゲイン | 位相 | カットオフ |
|---|---|---|---|
| LPF | (遅れ) | ||
| HPF | (進み) |
ある周波数帯だけを通す。LPF+HPFで構成し、高周波(ノイズ)と低周波(直流分)の両方をカットする。 ゲインと帯域幅の積(GB積)は一定。
負荷のインピーダンスを考慮する必要がある。例えばHPFの出力に負荷抵抗を並列接続すると、 等価抵抗は半分になりカットオフ周波数が2倍にずれる。対策はバッファ(緩衝器)の活用。
半導体の物性
ものは「電気の通しやすさ」で3つに分けられる:導体(金属。よく通す)、 絶縁体(ゴム・ガラス。通さない)、そのちょうど中間が半導体(シリコンSiなど)。 半導体のおもしろさは、ふだんはあまり通さないのに、熱・光・不純物のさじ加減で「通す/通さない」を自在に操れること。 この「操れる」性質が、ダイオードやトランジスタの土台になる。
シリコンの「手」と共有結合:なぜ純粋なSiは電気を通しにくい?
シリコン原子は、いちばん外側に電子を4個もっている(これを価電子=「結合につかえる手」だと思えばよい)。 シリコンの結晶では、となり合う原子どうしが手を1本ずつ出し合い、電子2個をはさんで握手する。これが共有結合。 4本の手がすべて隣の原子とつながると、どの電子も結合に縛りつけられて動けない。 動ける電子がない=電気を運べないので、純粋なシリコンはほとんど電気を通さない(ほぼ絶縁体)。
共有結合:となりと手を出し合って電子2個( )を共有。全部の手がふさがると電子は動けない=電気を運べない。
キャリア=電気を運ぶ粒(電子とホール)
電気を運ぶ粒のこと。半導体では2種類が登場する。
(1) 自由電子:結合の手につながれていた電子が熱や光のエネルギーをもらうと、手を振りほどいて飛び出し、 結晶の中を自由に動き回れるようになる。これがマイナスの電気を運ぶ。
(2) ホール(正孔):電子が飛び出したあとに残る「手の空き」=空席。 まわりの電子が次々この空席へ移っていくと、空席のほうが反対向きに動いていくように見える。 空席はプラスの電気をもった粒のように振る舞うので、これも立派なキャリア。
熱・光で電子が手を振りほどく → 動ける「自由電子」と、残った「空席(ホール)」が同時に1個ずつ生まれる。
電子が1個飛び出すと、空席(ホール)も必ず1個できる=電子とホールはいつもペアで生まれる(対生成)。 逆に、動ける電子が空席にはまり込むと両方とも消える(再結合)。
真性半導体:電子とホールは必ず同数
不純物をまったく混ぜていない純粋な半導体を真性半導体(i型)という。ここではキャリアは熱でできるペアでしか作れず、 必ず電子とホールが対で生まれるので、電子の数 とホールの数 は等しい()。 ただしその数はとても少なく、このままでは電流をほとんど流せない。→ そこで次の「不純物を混ぜる」が効いてくる。
不純物を混ぜてキャリアを増やす(n型・p型)
半導体を役立てるには、わざと不純物を少しだけ混ぜてキャリアを増やす(混ぜることをドープという。ごく微量程度でよい)。 混ぜる原子の「手の数」で2種類に分かれる。
手を5本もつ原子(V=5族。ヒ素Asなど)を混ぜる。4本は隣との結合に使うが電子が1個余る。 余った電子は簡単に自由電子になる→多数キャリアは電子(マイナス)。電子を「くれる」ので、この不純物をドナーと呼ぶ。
手が3本しかない原子(III=3族。ホウ素Bなど)を混ぜる。手が1本足りず空席(ホール)ができる →多数キャリアはホール(プラス)。電子を「受け取る(空席を作る)」ので、この不純物をアクセプタと呼ぶ。
多数キャリアと少数キャリア
電気を運ぶ主役(数が多い方)と脇役(少ない方)のこと。 n型は電子が多数・ホールが少数、p型はホールが多数・電子が少数。 n型でも熱でできるペアのぶんだけホールが少し存在する(これが少数キャリア)。
どれだけ不純物を混ぜても、(電子の数)(ホールの数) は一定に保たれる:
だから少数キャリアの数=(多数キャリアの数)で計算できる(多い方が増えるほど、少ない方は減る)。
まとめ表(真性・p型・n型)
| 真性(i型) | p型 | n型 | |
|---|---|---|---|
| 混ぜる原子 | なし(純粋) | III族(手3本, アクセプタ, B等) | V族(手5本, ドナー, As等) |
| 手(価電子)の数 | 4 | 3 | 5 |
| 多数キャリア | 電子=ホール | ホール(正孔・+) | 電子(-) |
| 数の関係 | |||
| 質量作用則 | — |
エネルギーバンド図(同じ話を「エネルギーの高さ」で描き直す)
バンド図は、いままでの「手」の話を電子のエネルギーの高さで描き直した図。電子は低いところから順に席を埋めていく。 価電子帯=手につながれて動けない電子がいる下の階、伝導帯=自由に動ける上の階、 その間の電子が居られないすき間が禁制帯(バンドギャップ)。 電子がを飛び越えて上の階へ上がる=さっきの「手を振りほどいて自由電子になる」と同じこと(下の階には空席=ホールが残る)。 フェルミ準位は電子の詰まり具合を水に例えたときの「水面」の高さの目安。 n型は電子が多くが上(伝導帯寄り)、p型は下(価電子帯寄り)、真性はちょうど中央にくる。
温度が上がると熱でペア(電子+ホール)がどんどん生まれてキャリアが増える ()。だから温度↑→キャリア↑→抵抗↓。 半導体の抵抗は温度と逆向きに動く(金属は温度↑で抵抗↑なので、半導体はその逆だと覚える)。
pn接合ダイオード
空乏層と内蔵電位
p型とn型を接合すると、境界で拡散(多数キャリアが濃度の低い側へ移動)と再結合が起き、 キャリアのない空乏層ができる。残されたアクセプタは負・ドナーは正の固定電荷となり、 これが作る内蔵電位(ビルトインポテンシャル)で拡散は止まる。
定常状態では「多数キャリアの拡散電流」と「少数キャリアのドリフト電流」が釣り合い、見かけ上の電流は0。 このバランスを直流電源で崩すと電流が流れる。
整流作用とI-V特性
順方向電圧:空乏層が狭くなり拡散・再結合で電流が流れる。逆方向電圧:空乏層が広がり電流は流れない(→可変容量に応用)。 これが整流作用。理想ダイオードのI-V:
ONのSiダイオードは電圧降下が電流によらずV一定とみなせる(簡易型)。 温度でI-V特性は変化する。電力計算や波形のピーク値ではこのVの差を忘れない。
整流回路の波形
交流が正のときだけ電流が流れる。の最大値はの最大値よりV小さい(V)。 全波整流はダイオード4個のブリッジ回路で、入力が正負どちらでも抵抗に流れる電流は同一方向。 出力に平滑コンデンサを付けると充放電を繰り返して波形が滑らかになり、AC/DC変換に使える。
※全波整流(ブリッジ):ACは左、は右の両端。T側が・B側がで、入力が正負どちらでもの電流は同一方向。
ダイオードを用いた論理回路
| OR | ||
| 0 | 0 | 0 |
| 0 | 5 | 4.3 |
| 5 | 0 | 4.3 |
| 5 | 5 | 4.3 |
| AND | ||
| 0 | 0 | 0.7 |
| 0 | 5 | 0.7 |
| 5 | 0 | 0.7 |
| 5 | 5 | 5 |
(簡易型 Vで計算。ORは「どちらか高い入力V」、ANDは「どちらか低い入力V」になる。)
降伏現象・ツェナー・LED
逆電圧を大きくすると急に大電流が流れる。電子雪崩降伏(avalanche):加速された少数キャリアがSi原子に衝突し電子-ホール対を雪崩的に生成。ツェナー降伏(Zener):トンネル効果。 ツェナー降伏電圧は制御でき、定電圧素子として使う(に印加される電圧はを超えない)。
LEDは電流再結合時に光を放出。。 LEDの電圧降下はVと通常のダイオードより大きい。フォトダイオードはLEDと逆で、光を受けて電流が流れる(光センサ)。
ダイオード回路の解析(計算の山場)
負荷直線による動作点
ダイオードは非線形なので、回路方程式(直線)と特性曲線の交点=動作点を求める。 直列回路 を変形した負荷直線 をI-V特性に重ねる。 簡易的にはON状態をV一定として 。
演習問題(配布スライド No.3-23)
図の回路で抵抗の両端電圧を求めよ。, , V。 ダイオード(), , は直列。
直列回路なので 。簡易型でV一定とおくか、負荷直線で交点を読む。
解法(簡易型):
.
(検算:V、V ✓。負荷直線でも, mAで一致。)
小信号等価回路(動作抵抗):曲がった特性を「直線」で近づける
実際の信号は大きな直流(バイアス)の上に、小さく揺れる交流(小信号)が乗っていることが多い (例:Vの直流にVの信号が乗る)。ところがダイオードのI-V特性は曲がっているので、そのままオームの法則()は使えない。 でも揺れがごく小さいなら、使うのは曲線のほんの一部分だけ。その一部分はほぼまっすぐに見えるので、 その傾きをもった1個の抵抗で置き換えてよい——これが小信号等価回路の発想。
動作点Qで特性曲線に接線を引くと、その傾きが 。 小信号が感じる抵抗 はその傾きの逆数:
電流の大きい動作点ほど曲線は急になり(傾きが大)、は小さくなる。
回路方程式 …(1)。入力がだけ揺れると …(2)。 (2)(1) で大きな直流分が消え、揺れの分だけが残る:
ここで と置いた。つまり小信号から見ると、ダイオードはただの抵抗 に化け、回路は と の直列という素直な線形回路になる(だからオームの法則・分圧が使える)。
を微分すると 。 その逆数が動作抵抗:
(室温 K では mV。問題2のようにが違えば をそのまま計算する。)
例:動作点mAなら 。電流を増やすほど は小さくなる。 直流分は大文字()、小信号(揺れ)は小文字()で書き分けるのが約束。
総合演習:結合コンデンサ付きの小信号増幅(No.3-26)
演習問題(配布スライド No.3-26)
図の回路で、(1)直流等価回路を描け、(2)動作点と動作抵抗を求めよ、(3)交流(小信号)等価回路を描きを求めよ。
V, V, , , , , は十分大きい。
結合コンデンサは直流を通さず交流を通す(が大きいので交流的には短絡)。だから直流と交流を分けて解く。 直流でバイアス(動作点)を決め、そこで得たを使って交流の増幅を計算する。
直流ではは開放=は切り離される。(小信号源)はとおく。残るのは ––ダイオード– の直列。
(2) 動作抵抗。
.(動作点 mA, V)
交流では直流電源は短絡、も短絡、ダイオードは動作抵抗に置き換わる。 すると –– の直列の先に、とが並列でぶら下がる回路になる。
は分圧で(の振幅はV):
(振幅約mV)。
直流→開放、交流→短絡がコンデンサの鉄則。直流でを出してから交流に使う順番を間違えない。 直流電源は交流等価回路では短絡する(電位の変化分はだから)。
多ダイオード回路(No.3-28)
演習問題(配布スライド No.3-28)
図の回路でを求めよ。V, k, k, k。 ダイオード(並列に)とダイオード(並列に)が直列。 (1)理想ダイオードの場合、(2)電圧降下Vの場合。
ON時は短絡とみなせ、も短絡される。電流はだけで決まり、全部ダイオードを流れる:
まずにはダイオードと同じVが掛かるので
に掛かる電圧は V なので、を流れる総電流は
各ノードでKCL(総電流が並列の枝とダイオード枝に分かれる):
, .
理想と簡易型(V)で答えが変わる。並列抵抗にもダイオードと同じVが掛かる点を見落とさない。
過去問演習:半導体・ダイオードの穴埋め
過去の試験問題の一部(配布スライド No.3-29/OIKAWA先生)
半導体は大きく真性半導体と (a) と (b) に分類される。真性半導体のキャリアは電子と正孔が同数であるが、 (a) の多数キャリアは正孔であり、(b) の多数キャリアは電子である。一般的に (a) はSi単結晶に (c) 族の不純物を 添加して作製され、この不純物を (d) と呼び、混入量はおおよそ (A) %である。
p型半導体とn型半導体で接合を作製すると、接合面近傍のキャリアが他方へ拡散により侵入する。互いに他の領域へ侵入したキャリアは その領域内では少数キャリアであるため、多数キャリアとの (e) により消滅する。そのため接合面付近はキャリアの存在しない 領域である (f) が形成される。p型半導体内の (f) には不純物がイオン化され (g) の固定電荷が、一方、n型半導体内の (f) には (h) の固定電荷が取り残されるため、(i) が生じ正味のキャリアの移動は止まる。
pnダイオードには電流を一方向に流しやすい性質、すなわち (j) 作用があり、通常ダイオードでの電圧降下はSiの場合おおよそ (B) Vである。 pnダイオードに (k) 電圧を印加しても僅かな電流しか流れないが、(k) 電圧を増加させていくと突如として電流が急激に増大する。 この現象を (l) と呼び、(m) の安定化に応用される。
解答:
| (a) | p型半導体 | (f) | 空乏層 | (k) | 逆(方向) |
| (b) | n型半導体 | (g) | 負 | (l) | 降伏(現象) |
| (c) | III(3) | (h) | 正 | (m) | 電圧(定電圧) |
| (d) | アクセプタ | (i) | 内蔵電位(電位障壁) | (A) | 約0.01 |
| (e) | 再結合 | (j) | 整流 | (B) | 約0.7 |
(a)は「多数キャリア=正孔」だからp型(III族・アクセプタ)。(g)(h)は空乏層の固定電荷で、 p側はアクセプタがイオン化して負、n側はドナーで正。(i)はこの固定電荷が作る内蔵電位。 (l)(m)は逆電圧での降伏を使ったツェナーダイオード=定電圧(電圧の安定化)。
トランジスタの構造と動作原理
分類とはたらき
トランジスタ=Transfer(伝達)+resistor(抵抗)。増幅・変調・演算・スイッチングを電気的に制御できる3端子素子。
バイポーラトランジスタ(BJT):電流で制御。npn型/pnp型。
ユニポーラトランジスタ(FET):電圧で制御。接合型FET/MOS-FET(各n型・p型)。
拡散長:トランジスタが効く理由
p型半導体に少数キャリア(電子)を注入すると、進むうちに確率的にホールと再結合して減っていく。密度は
ここで は拡散長=電子密度がになる距離。 p型領域が拡散長より十分短いと、多くの電子は再結合せず通過できる。これがトランジスタ動作の鍵。
npnトランジスタの構造と動作原理
キャリア密度が となるように作る。 Emitter=放射する(電子の注入を多く)、Base=土台(拡散長より十分薄く)、Collector=収集する(電子の空席を多く)。 E と C は非対称なので逆に配線してはいけない。
EB間=順方向電圧、CB間=逆方向電圧。 (はYを基準としたXの電位。)
動作の4ステップ(npn):
(順方向)によってベース電流が流れる(ベースにホールが注入)。
エミッタの多数キャリア(電子)がベース領域へ拡散する。
一部はホールと再結合して消えるが、大部分はコレクタまで到達(ベースが薄いから)。
到達した電子は(逆方向)で収集され、コレクタ電流が流れる。
要するに僅かなベース電流で大きなコレクタ電流を制御できる。これが増幅器の原理。 pnp型はキャリアと電源の向きが逆になるだけで、原理(EB順・CB逆、薄いベース)は同じ。
回路記号と型番
[2pt] npn型(矢印が外向き)
pnp型(矢印が内向き)
矢印はエミッタを示す(向きに注意:npnは外向き、pnpは内向き)。丸は省略することが多く、回路図中にE/C/Bは普通書かない。
2SA(pnp・高周波), 2SB(pnp・低周波), 2SC(npn・高周波), 2SD(npn・低周波)。
電流増幅率(hFE)の導出
3つの電流の関係。KCLより 。コレクタ電流はエミッタ電流に比例: ( ベース接地電流増幅率, 通常)。(エミッタ注入効率・ベース輸送係数・コレクタ倍増係数)。
を消去する。 なので
,(エミッタ接地電流増幅率)。
例: なら 。 なら 。
ベースを薄く作ると再結合電流が減り拡散電流が増えるので、に近づき増幅率が増大する。 トランジスタを小さく作るほど性能が向上する理由。
接地(コモン)法による3種類の回路
トランジスタは3端子素子。増幅回路は2端子対回路(4端子回路)なので、3端子のうち1つを共通(接地)にして入力・出力で使う。 共通にする端子でエミッタ接地・コレクタ接地・ベース接地の3種類に分かれる。
| 接地方式 | 共通(接地)端子 | 入力端子 | 出力端子 |
|---|---|---|---|
| エミッタ接地 | エミッタ | ベース | コレクタ |
| コレクタ接地 | コレクタ | ベース | エミッタ |
| ベース接地 | ベース | エミッタ | コレクタ |
電圧表記 はYを基準としたXの電位。例:=エミッタから見たベース電位。 代表はエミッタ接地(入力=ベース、出力=コレクタ)。 ※厳密には接地していない場合もあるので「コモン」とも呼ぶ。
まず用語をやさしく(増幅回路編の難語の対訳)
| バイアス | 信号を入れる前に、あらかじめ流しておく直流の電流・電圧。信号が乗る「土台の高さ」。 |
| 動作点 | バイアスだけかけたときに回路が落ち着く電流と電圧の組。グラフ上の1点。 |
| 負荷直線 | 回路の式(オームの法則)を特性グラフに重ねて描いた直線。曲線との交点が動作点。 |
| 静特性 | 信号を入れず、直流だけを変えて測った特性。直流特性。 |
| 活性領域 | トランジスタが増幅器として使える範囲。 が にほとんどよらず一定になる平らな部分。 |
| 飽和領域 | が小さすぎて が立ち上がりきらない範囲。ここに入ると波形が潰れる。 |
| アーリー効果 | を上げると がじわっと増える現象。出力特性が水平でなく右上がりになる原因。 |
| 小信号 | 直流の土台に比べて十分小さい揺らぎ。小さいので曲線を直線とみなせる。 |
| 等価回路 | 本物のトランジスタを、抵抗と電流源だけの計算しやすい模型に置き換えたもの。 |
| hパラメータ | その模型の数値。実際に測れるように選んである4つの定数。 |
| 入力インピーダンス | 入口から回路を見たときの見かけの抵抗。大きいほど前段から電流を奪わない。 |
| 出力インピーダンス | 出口から回路を見たときの見かけの内部抵抗。小さいほど重い負荷でも電圧が落ちない。 |
| インピーダンス変換 | 電圧はそのままで を高く を低くする働き。力持ちにするイメージ。 |
| ブリーダ電流 | 分圧抵抗 を素通りして流れる電流。ベース電流よりずっと大きくしておく。 |
| 結合コンデンサ | 直流を止めて交流だけ通すコンデンサ。段と段を直流的に切り離すために入れる。 |
| 逆位相 | 入力が上がると出力が下がる関係。式ではマイナス符号として出る。 |
道具箱:直流と交流を分けて考える(この範囲の全問に効く)
鉄則。 トランジスタ回路は直流の問題と交流の問題に必ず分けて解く。
| 直流のとき | コンデンサは開放(断線とみなす)。直流電源はそのまま残す。 動作点 を求める。 |
| 交流のとき | コンデンサは短絡(ただの線)。直流電源も短絡( 端子は交流的にはGNDと同じ)。 小信号等価回路にして を求める。 |
は「いつも一定の V」であって、揺れない。交流の解析では「揺れの分」だけを追いかけるので、 揺れが の点は電位の基準(GND)と同じ扱いでよい。だから のレールは交流等価回路ではGNDにつながる。
交流等価回路に描き替えるとき、 につながっていた や の上端はGNDへ落ちる。 と が両方GNDに落ちるので、交流的には の並列抵抗1本になる。ここを忘れて だけ書くのが定番の失点。
ここから後の増幅回路の計算では、次の3つを道具として黙って使う。式だけ確認しておく。
(a) 電流の関係、、。 は 以上なので は と大きくなる。ゆえに は に比べて無視できるほど小さい。
(b) 接地(コモン)法3端子のうち1つを入出力の共通端子にする。
| 接地方法 | 入力端子 | 出力端子 |
|---|---|---|
| エミッタ接地 | ベース | コレクタ |
| コレクタ接地 | ベース | エミッタ |
| ベース接地 | エミッタ | コレクタ |
(c) 電圧の記号添字2文字は「後ろから見た前」。 はエミッタから見たベース電位。 直流は大文字()、交流の小信号は小文字()。
トランジスタのエミッタ接地静特性
測るのは3つの特性
エミッタ接地は入力が 、出力が の合計4つの量をもつ。 組み合わせは 通りあるが、実際に使うのは次の3つだけである。
| 名前 | グラフ | 形と読み方 |
|---|---|---|
| 入力特性 | – | pn接合そのもの。 V で急に立ち上がる。傾きが 。 |
| 出力特性 | – | をパラメータにした曲線群。ほぼ水平。わずかな傾きが 。 |
| 伝達特性 | – | ほぼ直線。傾きが 。 |
「静特性」は入力を一定にしたときの特性直流特性。信号を入れながら測るものではない。 また他のパラメータは一定に保って測る。たとえば出力特性を測るときは を1つに固定する。
活性領域・飽和領域とアーリー効果
が V 付近の、曲線が立ち上がっている急な部分。ここではコレクタ・ベース間が順バイアスになってしまい、 が で決まらなくなる。動作点をここに置くと出力波形の下側が潰れる。
曲線がほぼ水平な部分。 が成り立ち、 だけで が決まる。増幅回路の動作点は必ずここに置く。
活性領域でも曲線は完全な水平ではなく、わずかに右上がりになる。延長線を左に伸ばすと によらず1点 ( V、アーリー電圧)に集まる。原因は、 を上げるとCB間の空乏層が広がり、 実効的にベースが薄くなって増幅率が上がることである。この傾きが(出力アドミタンス)の正体。
を上げすぎたときに が増える理由は3つ挙げられる: (1) 空乏層拡大=ベース幅減少で増幅率増大、(2) 強い電界でSi原子から電子が引き剥がされキャリア増加、 (3) 過剰な で降伏現象。いずれも出力波形が歪む原因になる。 「アーリー効果があるから出力特性は水平である」は逆なので×。
増幅の原理と負荷直線・動作点
なぜバイアスが必要か
増幅回路は入力信号のエネルギーを増やしているのではない。直流電源から取り出したエネルギーを、 入力信号の形どおりに切り出して大きな出力信号にしている。だから直流電源が要り、その直流電源で トランジスタを「増幅できる状態(活性領域)」に置いておく作業がバイアスである。
増幅回路を動作させるには適当な直流バイアスが必要。直流電源と抵抗値をうまく選んで 動作点を活性領域の中央付近に置く。
入力側の負荷直線: をベース電流に翻訳する
基本型:入力側の動作点(令和6年度 期末 問題3(1) と同型)
V、 k のとき、入力特性グラフから直流ベース電流 を求めよ。
入力特性 – は曲線なので式では解けない。そこで回路の側から立てた直線を 同じグラフに重ね、交点を読む。これが負荷直線法である。
入力側のループに電圧則を適用する。
について解き、 を横軸とみて直線の形に整理する。
数値を入れる。、 V なので
この直線は で A、 で V の2点を通る。
グラフの交点より (このとき V)
負荷直線を引くのに曲線の式は要らない。2つの切片( のときの 、 のときの ) を打って定規で結ぶだけ。答案には必ず直線の式と2つの切片を書くこと。読み取り値だけだと減点される。
出力側の負荷直線:動作点と出力の振れ幅
出力側も同じ手順。ループに電圧則を適用して直線を作り、出力特性群に重ねる。
2つの切片は のとき 、 のとき 。 先の A の曲線との交点が動作点Qになる。、 k、 V なら
mA、 V(動作点Qは前ページのグラフの )
が加わると が A を中心に上下し、動作点Qが負荷直線の上を往復する。 が増えれば が増え、 は減る。これが逆位相(式のマイナス符号)の正体である。
出力が振れる幅は「上は まで、下は (またはトランジスタの飽和)まで」で頭打ちになる。
動作点が高すぎる( が に近い) 上側が電源で頭打ち、山が平らに潰れる。
動作点が低すぎる( が に近い) 下側が飽和領域に入り、谷が潰れる。
中央付近() 上下対称に最大まで振れる。
単一電源(1電源)バイアス回路:不安定なものから安定なものへ
固定バイアス回路(不安定)
ベース電流は で決まる。 は温度でずれるし、 は同じ型番でも 個体ごとに から までばらつく。 なので が2倍違えば動作点も2倍ずれる。
固定バイアスは の大きさに敏感で安定性が悪い。温度が上がる が増える 発熱が増える さらに が増える、という熱暴走の原因になる。
電圧帰還バイアス回路( を一定に保つ)
の上端を ではなくコレクタにつなぐ。すると
となり、次の負帰還ループができる。
が増加 が増加 が増加 が減少 (元に戻る)
が小さいほど の変化が大きくなり、安定度は上がる。ただし を小さくすると 動作点そのものが制約を受け、また交流的にも入力を食ってしまうので自由には選べない。
電流帰還バイアス回路(エミッタ接地増幅回路):本命
の分圧でベース電位 を固定し、エミッタに抵抗 を入れる。すると次のループが働く。
増加 増加 増加 ( は一定なので) 減少 減少 減少
が大きいほど安定。 が にそのまま比例して応答するので、電圧帰還より効きが速い。 安定化と引きかえに増幅率が抵抗の比だけで決まるようになる:
ブリーダ電流 ベース電流にすること。 を素通りする電流(ブリーダ電流)が より 十分大きくないと、 が抜けた分だけ分圧比が崩れて が一定でなくなる。 これが成り立つ前提で初めて と書ける。
エミッタ接地増幅回路の設計(手順1〜9)
設計課題(講義スライド No.5-4〜5-7)
下の仕様を満たすエミッタ接地増幅回路の4つの抵抗値を決めよ。F とする。
| 電圧利得 | dB 以上 |
| 出力電圧 | 以上 |
| 低域カットオフ周波数 | Hz 程度 |
| 電源電圧 | V |
設計ヒント:ベース電流は無視できる/エミッタ電位は V 程度/エミッタ電流は mA 以下と仮定する。
未知数は の4つ。仕様も4つ(利得・振幅・カットオフ・電源)なので一意に決まる。 順番が大事で、仮定できるところ( と )から出発して外側へ広げていく。 最後に必ずE6系列に丸めてから逆算して、仕様を満たしているか確認する。
V を選ぶ。
**手順1: と を仮定する。**ヒントに従って mA、 V とする。
手順2: と を求める。
利得の仕様を倍率に直す。 dB は
より k。 E6系列で余裕をみて k とする。
手順3:ベース電位 を求める。
手順4: と の比を求める。 は を で分圧した 側の電圧なので
手順5:カットオフ周波数から を求める。 交流から見ると、 と「」がHPF(高域通過フィルタ)を作っている。
手順6: を確定する。 を並列の式に代入する。
**手順7:E6系列に丸める。**E6系列は 。
**手順8:逆算する(丸めたのでずれている)。**ベース電流は無視できるので として順にたどる。
手順9:仕様を満たすか確認する。
利得: 倍 dB dB OK
出力振幅:上側は V まで、下側は V まで。 小さいほうを取って振幅 V OK
カットオフ:、 ( Hz 程度)OK
V、 k、、 k、 k
仕様を満たさなかったら手順7(丸め方)か手順1( の仮定)に戻る。いきなり全部やり直さない。 また波形の確認では「 で頭打ち」と「 で頭打ち」の両方を見る。片方だけ見て 「 出るからOK」とするのが典型的な失点。
小信号等価回路とhパラメータ
なぜ等価回路にするのか
トランジスタやダイオードの特性は非線形(曲線)なので、そのままでは解析も設計もできない。 そこで「信号が小さい」場合に限って、動作点まわりで曲線を接線で置き換える。 接線は直線なので、抵抗と電流源だけの回路(線形回路)として計算できるようになる。
等価回路が使える条件(2つとも必要)
入力信号が直流バイアス分に対して十分小さいこと。
回路に適切な直流バイアスが印加されていること(動作点が活性領域にあること)。
交流信号が大きいと接線からずれ、非線形が効いてきて歪む。あくまで模型であって本物ではない。
T型等価回路(構造から作る模型)
npnトランジスタは「n–p–n」=ダイオード2個が背中合わせの構造。小信号に対してはダイオードが 抵抗に置き換わることを使い、内部にベース抵抗 、エミッタ抵抗 、 コレクタ抵抗 を置いて表す。文字がTの字に並ぶのでT型。
コレクタ側の抵抗 は非常に大きいので開放とみなして省略してよい。
T型の欠点は が直接測定できないこと(内部の点B’は 実際には存在しない)。この欠点を解消したのが次のhパラメータである。
hパラメータ(測れる模型)
トランジスタを中身を問わない二端子対回路(ブラックボックス)とみなし、 入力 と出力 の関係だけを4つの定数で書く。
次元が混ざっている(、無次元、無次元、S)ので Hybrid(混成)の h。
| 記号 | 名前 | 単位 | 測り方・静特性での意味 |
|---|---|---|---|
| 入力インピーダンス (input impedance) | 出力を短絡()して 。入力特性 – の傾きの逆数 。 | ||
| 電圧帰還率 (reverse) | — | 入力を開放()して 。出力が入力へ戻る割合。非常に小さい。 | |
| 電流増幅率 (forward) | — | 出力を短絡して 。伝達特性 – の傾き。 | |
| 出力アドミタンス (output admittance) | S | 入力を開放して 。出力特性 – の傾き。非常に小さい。 |
添字の2文字目は接地方法を表す。e=エミッタ接地、c=コレクタ接地、b=ベース接地。
と は非常に小さいので 、 とおくと
となり、入力は抵抗 1本、出力は電流源 1個だけの、たいへん簡単な模型になる。 型等価回路とも呼ぶ。試験で使うのはこの簡易型である。
直流バイアスによってhパラメータは大きく変わる。同じトランジスタでも動作点が違えば も も違う。 だからデータシートには「 mA、 V にて」のような測定条件が必ず併記されている。
エミッタ接地の小信号解析
がある場合(電流帰還型・本命の型)
まずベース側のループから を で表す。エミッタには ではなく が流れることに注意する。
入力ループに電圧則を適用する。
でくくると
出力側はコレクタ電流 が に流れ込む。電流の向きが の向きと逆なので符号が付く。
近似は かつ のとき。 分母分子の が約分され、増幅率が抵抗の比だけで決まる。
は個体ごとに とばらつくのに、 には が入らない。 つまりどのトランジスタを挿しても同じ増幅率になる。安定化の効果が交流にも及んでいる。
ベースから右を見た抵抗は式(1)の分母そのもの。
回路全体では が並列に入る。
は 倍に拡大されて見える。 k、 なら k に見える。 「エミッタから見上げるとベース側は に縮み、ベースから見下ろすとエミッタ側は 倍に伸びる」 と覚えると、コレクタ接地の も同じ話として理解できる。
何を入力電流とみなすかで答えが変わるので問題文を必ず確認する。
全入力電流 ( は へ流れる分)を入力とすると
出力端から電圧をかけても、コレクタ側は電流源( で決まる定電流)なので電流が流れない。
がない場合( が交流的に接地されている場合)
に大容量のコンデンサを並列に入れると、交流的には が短絡される。式(1)で とすればよい。
を交流的に殺すと増幅率は跳ね上がるが、 のばらつきがそのまま利得のばらつきになり、 も 程度まで下がる。安定性・入力インピーダンスと利得はトレードオフ。
出力に負荷 をつなぐと何が起きるか
は と並列に入る。 が2つに分流するので、 に流れる分が減り、出力電圧が下がる。これは が小さくなったのと等価である。
| が大きい | はほぼ変わらない/ は低下する |
| が小さい | は低下する/ はほぼ変わらない |
| 負荷なし | 接続後 | コメント | ||
|---|---|---|---|---|
| 大 | 低下 | |||
| 大 | 低下 | |||
| 中 | 変化なし | |||
| 向上(ただし増幅率と兼ね合い) |
コレクタ接地(エミッタフォロワ)
直流電源は交流的に短絡なので、コレクタは交流的に接地されている。入力はベース、出力はエミッタ。
入力ループはエミッタ接地のときと同じ形( が加わるだけ)。
出力は に が流れて生じる電圧。今回は の向きと電流の向きが一致するので符号は正。
負荷抵抗を外し、出力端に電圧源 をつないで流れ込む電流を測る。このとき入力側は短絡するので 、出力電流は 。比をとって となる。
なので電圧増幅の役には立たない。しかし 「 が高く、 が低く、 が大きい」=インピーダンス変換器として一級品である。 また を変えても はほぼ のままなので、 の選び方が利得に影響しない。 出力が入力に追従する(follow する)のでエミッタフォロワと呼ぶ。
ベース接地
分圧抵抗のベース側にコンデンサが入っており、交流的にベースが接地されている。 入力はエミッタ、出力はコレクタ。エミッタ側は (トランジスタ側)と (GND側)に分かれ、その中点に信号を入れる。
電流の向きに注意して入力ループを立てる。
(電流は図の と逆向きになるのでマイナスが付く。)出力は
入力電流は へ流れる分とエミッタへ流れる分の和。
を下げようとして を大きくすると が下がる。 増幅率と入力インピーダンスはトレードオフ。 なおエミッタ接地と違って出力は同相(マイナスが付かない)。ここは○×で狙われる。
3つの接地方式の比較と電力増幅回路
| 接地方法 | エミッタ接地 | コレクタ接地 | ベース接地 |
|---|---|---|---|
| 電圧増幅率 | 大(逆相) | (同相) | 大(同相) |
| 電流増幅率 | 大 | 大 | |
| 入力インピーダンス | 中高 | 高 | 低 |
| 出力インピーダンス | 中 | 低 | 中 |
| 周波数特性 | 悪 | 良 | 良 |
| 用途 | 電力増幅 | 電流増幅・インピーダンス変換 | 電圧増幅・インピーダンス変換 |
スピーカを鳴らしたい:なぜ2段必要か
問い
エミッタ接地増幅回路だけでスピーカ()を鳴らせない。なぜか。どうすればよいか。
前節の に 、 k を入れてみる。
せっかく増幅した電圧の % が 側で失われ、スピーカにはほとんど印加されない。 言い換えるとエミッタ接地は出力インピーダンスが高すぎて、軽い負荷しか駆動できない。
対策:エミッタ接地(電圧増幅部)の後ろにコレクタ接地(電流増幅部・インピーダンス変換)をつなぐ。
コレクタ接地は が高い 前段のエミッタ接地の増幅率を落とさない。
コレクタ接地は が低い スピーカの抵抗と同等で駆動できる。
コレクタ接地は だが が大きい 電圧は前段で稼ぎ、電流はここで稼ぐ。
2つ合わせて電力増幅回路(電圧電流電力を稼ぐ回路)になる。
過去問完全演習:令和6年度 電子回路A 期末試験
(出典: 令和6年度 電子回路A 期末試験(及川大 先生・令和6年7月29日)。7問中6問選択、問題1・2は必須。数値は有効桁2桁。本プリントでは全7問を収録している。)
問題1【必須問題】(各2点 合計20点):半導体の穴埋め
令和6年度 期末 問題1(20点・必須)
(a)〜(j) に適切な語句(または数値)を解答欄に記入しよう。
半導体は大きく (a) 半導体と不純物半導体に分類される。不純物半導体はさらに (b) 半導体と (c) 半導体に分類される。 (a) のキャリアは電子と正孔が同数であるが、 (b) 半導体の 多数キャリアは電子であり、 (c) 半導体の多数キャリアはホールである。一般的に n 形半導体は Si 単結晶に V 族の不純物を添加して作製され、この不純物を (d) とよぶ。p 形半導体と n 形半導体で接合を作製すると、 接合面近傍のキャリアが他方へ (e) により侵入する。互いに他の領域へ侵入したキャリアは再結合により消滅する。 そのため接合面付近はキャリアの存在しない領域である (f) が形成される。n 形半導体内の (f) には 不純物がイオン化され (g) の固定電荷が、同様に p 形半導体内の (f) には (h) の 固定電荷が取り残されるため、ビルトインポテンシャルが生じ正味のキャリアの移動は止まる。pn ダイオードには電流を 一方向に流しやすい性質、すなわち整流作用があり DC/AC 変換等に応用される。通電状態のダイオードでの電圧降下は 室温の Si の場合おおよそ (i) V である。また、pn ダイオードに逆方向電圧を印加しても僅かな電流しか流れないが、 その電圧を増加させていくと突如として電流が急激に増大する。この現象を降伏現象と呼び、キャリアが加速され鼠算的に 増加する (j) とトンネル効果によるツェナー降伏がある。
語句を丸暗記するのではなく、どこの話をしているかで決める。
| 記号 | 答え | なぜそうなるか |
|---|---|---|
| (a) | 真性 | 不純物を入れていない純粋な半導体。電子とホールが必ず同数()。 |
| (b) | n 形 | 多数キャリアが電子(negative)だから n。V族(ドナー)を添加する。 |
| (c) | p 形 | 多数キャリアがホール(positive)だから p。III族(アクセプタ)を添加する。 |
| (d) | ドナー | 電子を1個「あげる(donate)」不純物。V族(P, As, Sb)。 |
| (e) | 拡散 | 濃い側から薄い側へ勝手に広がる動き。電界で押される「ドリフト」とは別物。 |
| (f) | 空乏層 | 電子とホールが再結合してキャリアが枯れた(空乏した)層。 |
| (g) | 正 | n形側に残るのは電子を放出したあとのドナーイオンなのでプラス。 |
| (h) | 負 | p形側に残るのは電子を受け取ったアクセプタイオンなのでマイナス。 |
| (i) | 0.6 | 室温Siの順方向電圧降下。 V。この問題では が正答。 |
| (j) | 電子雪崩降伏 | 加速された電子が原子にぶつかって次々にキャリアを増やす(なだれ)。 |
固定電荷の符号 (g)(h) が最頻出のひっかけ。「n形にはプラス、p形にはマイナス」と覚える。 理由は「n形はドナーが電子を手放す=プラスのイオンが残る」「p形はアクセプタが電子を受け取る=マイナスのイオンが残る」。 この向きだから内蔵電位(ビルトインポテンシャル)はn形側が高電位になり、キャリアの拡散が止まる。 なお か かは問題文の指定に従う(令和8年度の中間試験では V と書かれていた)。
問題2【必須問題】(20点):電流帰還バイアス回路の完全解析
令和6年度 期末 問題2(20点)
下図の回路について次の値を求めよ(単位に注意)。ただし V、 k、 とする。 の値は十分大きく、直流ベース電流は他の電流と比較して十分小さいと仮定してよい。入力信号は正弦波とする。
直流バイアス の値を求めよ。[各2点]
小信号等価回路から、電圧増幅率 、電流増幅率 、入力インピーダンス の値を求めよ。[各3点]
出力波形が正弦波となる(クリップしない)入力の振幅の最大値を求めよ。[3点]
出力端子 とGNDの間に k を挿入し、入力 に実効値 mV の正弦波を印加したとき、 で消費される有効電力 の値を求めよ。[2点]
回路図は下に示す。
「直流ベース電流は十分小さい」=ブリーダ電流が支配的なので、 は素直に分圧で出る。 そこから と一本道。交流はエミッタ抵抗にバイパスコンデンサがないので、 を残した式()を使う。
ベース電流を無視すると k と k は直列とみなせる。
エミッタ電流は の両端電圧から出る。
が小さいので mA。したがって
V、 V、 V
は交流でも生きている。まずベース側から見た抵抗を作る。
電圧増幅率は
入力インピーダンスは、分圧抵抗の並列とベース側の並列。
電流増幅率は「出力電流 全入力電流」。、 だから
dB( 倍・逆相)、 dB( 倍)、 k
ここが一番ミスが出る。 が上がるとコレクタ電位は下がり、同時にエミッタ電位は上がる。 両者が出会った時点()でトランジスタは飽和して波形が潰れる。だから2つの動きを足して考える。
入力振幅 に対して、コレクタの振れは (下向き)。エミッタの振れは
(上向き)。動作点での は
クリップしない条件は が にならないこと。
入力振幅の最大値 V
コレクタ側だけを見て V としてしまうのが最頻出の誤答。 にバイパスコンデンサがない回路ではエミッタ電位も一緒に動くので、両方の振れを足す。 逆に がバイパスされている回路なら なので、コレクタ側だけでよい。
は と並列に入るので増幅率が落ちる。
入力が実効値 mV なので、出力も実効値で出る。
mW
mV は実効値なので、そのまま に入れてよい(振幅なら 倍が必要)。 問題文が「実効値」か「振幅」かを必ず確認する。
問題3(10点):静特性と負荷直線
令和6年度 期末 問題3(各5点 計10点)
エミッタ接地回路の直流特性について答えよ。 V、 k、 k、 V、。
入力特性(– 特性)と負荷直線から動作点を求め、直流ベース電流 を求めよ。
コレクタの直流電位 を求めよ。
§6.2・§6.3 でやった型そのもの。回路方程式を立てて直線にする。
この直線を入力特性に重ねると、交点は A( V)。
A、 V
V と決め打ちして A としないこと。 この問題はグラフから読む指示なので、負荷直線を書き込んで交点を読むのが解法。 答案には直線の式と2つの切片も残す。
問題4(10点):コレクタ接地増幅回路
令和6年度 期末 問題4(各5点 計10点)
、、、 からなるコレクタ接地増幅回路について答えよ。 (1) 小信号等価回路を描け[4点](2) 電圧増幅率 を求めよ[3点](3) 入力インピーダンスを求めよ[3点]
等価回路は §11 の図(、、電流源 、)。 入力ループの回路方程式は
出力は に が流れて生じる電圧なので 。
等価回路を描くときの減点ポイントは3つ。 (a) 直流電源 を短絡して消していない、 (b) コレクタが接地されていない、 (c) エミッタに流れる電流を にしている(正しくは )。
問題5(各2点 計10点):○×
令和6年度 期末 問題5(10点)
下記の文章において合っている場合は○、誤っている場合は×を書け。
ホールという粒子は存在しないため、質量のない粒子と見なせ、ホールの移動度は電子の移動度よりも大きい。
逆バイアスされたダイオードは可変容量キャパシタンスとして動作可能である。
エサキダイオードは数 THz の周波数の発振に適している。
一般的に増幅回路は電圧増幅率と、増幅可能な周波数帯域幅は比例する。
増幅回路において、動作点がバイポーラトランジスタの出力特性の飽和領域になるように設計することが望ましい。
**1. ×**ホールは「電子が抜けた空席」を粒子として扱った見かけの粒子だが、 結晶中では有効質量をもつ扱いをする。しかも移動度は電子の方が大きい(Si でおよそ3倍)。 「質量がない」「ホールの方が速い」の2か所が誤り。
**2. ○**逆バイアスをかけると空乏層が広がる。空乏層=キャリアのない絶縁層なので、 これを誘電体としたコンデンサとみなせる。逆電圧を変えると空乏層の厚みが変わり容量が変わる =可変容量ダイオード(バラクタ)。
**3. ×**エサキダイオード(トンネルダイオード)は負性抵抗を利用した高速素子で、 マイクロ波帯(GHz オーダー)の発振に使われる。数 THz は過大。
**4. ×**逆で、反比例(トレードオフ)の関係にある。利得を上げると帯域は狭くなる (利得帯域幅積がほぼ一定)。3接地の比較表でも「エミッタ接地は利得が大きいが周波数特性は悪い」 「コレクタ接地・ベース接地は利得の面で劣るが周波数特性は良い」となっている。
**5. ×**動作点は活性領域に置く。飽和領域は が小さく が で決まらない領域で、 ここに動作点を置くと出力波形の下側が潰れる。
この○×は正誤の理由を一文で言えるかが本質。「比例/反比例」「活性/飽和」「電子/ホール」のような 対になる語をひっくり返して出題される定番の型なので、対の語をセットで覚える。 2番のように正しい選択肢も必ず混ざるので、全部×と決め打ちしない。
問題6(1マス1点 計10点):ダイオードAND回路
令和6年度 期末 問題6(10点)
下図の AND 演算回路について、出力電圧 (ダイオードが理想の場合)と (ダイオードの電圧降下が V の場合)の空欄を埋めよ。
上の抵抗は V へのプルアップ。各ダイオードは出力ノードから入力へ向かって導通できる向きに入っている。 つまり入力が低いところへ電流が逃げるので、出力はいちばん低い入力に引きずり下ろされる。これがAND動作。
理想ダイオードなら電圧降下 なので 。 実際のダイオードは順方向に V 落ちるので、出力は最低入力より V 高いところで釣り合う:
ただしどのダイオードも導通しない場合は電流が流れず、出力は抵抗の上端の電源電圧 V のまま。 (全入力が V のときがこれ。 V にはならない。)
| (V) | (V) | (V) | (V) | (V) |
|---|---|---|---|---|
| 10 | 10 | 10 | 10.0 | 10.0 |
| 0 | 0 | 10 | 0.0 | 0.70 |
| 0 | 10 | 10 | 0.0 | 0.70 |
| 5 | 5 | 5 | 5.0 | 5.7 |
| 1 | 1 | 1 | 1.0 | 1.70 |
を「最低入力 V」としてしまうのが定番の誤答。 ダイオードは出力側から入力側へ電流を流すので、出力の方が入力より だけ高いところで止まる。 向きを確かめるコツは「電流はどちら向きに流れるか」を1本だけ追うこと。 もう1つの落とし穴が1行目。全入力が電源電圧と同じならダイオードは導通せず、出力はプルアップされた V のまま。
問題7(10点):出力インピーダンスの記述問題
令和6年度 期末 問題7(10点)
問題2の増幅回路( k)について答えよ。 (1) 出力端子 とGNDの間に低抵抗()を接続しても、増幅された電圧が に印加されない。この理由を説明せよ。[7点] (2) 増幅信号を に印加するためにはどのような工夫をすればよいか説明せよ。[3点]
(1) 解答例。 交流等価回路では、負荷 はコレクタ抵抗 と並列に入る。コレクタ電流 は 両者に分流するため、実効的な負荷抵抗は まで小さくなり、増幅率は
と約 に低下する。言い換えると、この増幅回路は出力インピーダンスが k と高いのに 負荷が と極端に軽いため、出力電圧のほとんどが内部の で分圧されて消費され、 負荷にはわずかしか現れない。
(2) 解答例。 と の間に、入力インピーダンスが高く出力インピーダンスが低い回路 (コレクタ接地=エミッタフォロワ)を1段はさむ。コレクタ接地は が高いので前段のエミッタ接地の 増幅率を落とさず、 と低いので の負荷も駆動できる。 電圧は前段で、電流はこの段で稼ぐ構成になり、全体として電力増幅回路になる。
「 を小さくすればいい」は不正解。 なので を下げると増幅率まで下がる。 を維持したまま負荷を駆動する、というのが問題の意図。
過去問完全演習:令和8年度 電子回路A 中間試験
(出典: 令和8年度 電子回路A 中間試験(及川大 先生・令和8年6月24日)。5問中4問選択、問題1は必須。数値問題は有効桁2桁の小数。)
今年度の中間試験そのもの。定期テストにこの範囲も含まれる以上、いちばん出題傾向に近い1本。 一度解いた問題でも、数値を変えられたときに同じ手順でたどれるかを確認する目的で解き直す価値が高い。
問題1【必須問題】(各1点 計10点):半導体の穴埋め
令和8年度 中間 問題1(10点・必須)
以下の文章に対して、(a)〜(j) に当てはまる適切な言葉を解答欄に記入しよう。
半導体は大きく (a) 半導体と p 形半導体、n 形半導体に分類される。 (a) のキャリアは 電子と正孔が同数であるが、n 形半導体の多数キャリアは (b) であり少数キャリアは (c) である。 一般的に n 形半導体は Si 単結晶に V 族の不純物を添加して作製され、この不純物を (d) と呼ぶ。 次に、p 形半導体と n 形半導体で接合を作製すると、接合面近傍のキャリアが他方へ拡散により侵入する。 互いに他の領域へ侵入したキャリアは (e) により消滅する。そのため接合面付近はキャリアの存在しない 領域である (f) が形成される。p 形半導体内の (f) には不純物がイオン化され (g) の 固定電荷が、同様に n 形半導体内の (f) には (h) の固定電荷が取り残されるため、 ビルトインポテンシャルが生じ正味のキャリアの移動は止まる。pn ダイオードには電流を一方向に流しやすい性質、 すなわち整流作用があり AC/DC 変換等に応用される。通電状態のダイオードでの電圧降下は室温の Si の場合 おおよそ V である。また、pn ダイオードに逆方向電圧を印加しても僅かな電流しか流れないが、その電圧を 増加させていくと突如として電流が急激に増大する。この現象を降伏現象と呼び、キャリアが加速され鼠算的に増加する 電子雪崩降伏とトンネル効果による (j) がある。
| 記号 | 答え | なぜそうなるか |
|---|---|---|
| (a) | 真性(i 形) | 不純物なし。。 |
| (b) | 電子 | n 形=negative=多数キャリアが電子。 |
| (c) | 正孔(ホール) | 多数が電子なら、少数は必ずもう一方のホール。 |
| (d) | ドナー | 電子を1個供給する V 族不純物。 |
| (e) | 再結合 | 侵入した電子とホールが出会って対消滅する。 |
| (f) | 空乏層 | 再結合でキャリアが枯れた層。 |
| (g) | 負 | p 形側の話なので、電子を受け取ったアクセプタイオン=マイナス。 |
| (h) | 正 | n 形側の話なので、電子を放出したドナーイオン=プラス。 |
| (j) | ツェナー降伏 | トンネル効果による降伏。なだれ(電子雪崩)とは別物。 |
令和6年度の同じ問題と比べると、(g)(h) が入れ替わっている。 令和6年度は「n 形の空乏層には正/p 形の空乏層には負」、令和8年度は文の順番が p 形→n 形になったので「p 形は負/n 形は正」。語順で暗記せず、どちら側の話かで決める。 (この年の問題文では (i) が本文に現れなかった。番号の振り漏れなので気にしなくてよい。)
問題2(各2点 計10点):ダイオードの負荷直線から交流ゲインまで
令和8年度 中間 問題2(10点)
下図の回路について次の問いに答えよ。 V、、、交流電圧源は と比較し 十分小さいと仮定し、ダイオードの電流電圧特性は右図の通りとする。
負荷直線の式を を用いた文字式で答えよ( は と の並列抵抗)。
負荷直線を図中に書き込み、ダイオードにかかる電圧 及び電流値 を求めよ(読み取り誤差は mA 程度まで考慮する)。
交流に対するダイオードの動作抵抗 を求めよ。ただし 、 J/K、 K、 C。
交流信号に対する等価回路を書こう。
抵抗 に生じる電圧を出力としたときの交流に対するゲイン を dB 表示で求めよ。
交流源は十分小さいので直流だけを見る。 と はダイオードから見て並列なので、 1本にまとめてから電圧則を立てる。
数値を入れる。
切片は で mA、 で V(グラフの外なので mA の点と傾きで引く)。 特性曲線との交点を読むと
V、 mA( mA の読み取り誤差は許容)
与えられた式に代入する。
交流から見るとダイオードは抵抗 、直流電源 は短絡。 と は並列のまま残る。
は に生じる電圧なので、 と の単純な分圧。
dB(ほぼ 倍。ダイオードは交流に対してほとんど抵抗にならない)
(2) で負荷直線の式に を代入し直すと mA になり、グラフ読み取りの mA と少しずれる。 この問題は mA の読み取り誤差が明示されているので、どちらでも正答。ただし(3)以降で使う値は 1つに固定すること(途中で乗り換えると数値が合わなくなる)。 と を並列にまとめ忘れて だけで負荷直線を引くのが最頻出の失点。
問題3(各5点 計10点):多ダイオード回路
令和8年度 中間 問題3(10点)
下図の回路において次の2つの場合について答えよ。 V、 k、 k、 k、 答えは有効桁2桁の小数で答えよ。
2つのダイオードが両方とも理想ダイオードの場合の を求めよ。
ダイオード D1 での電圧降下が V、ダイオード D2 での電圧降下が V の場合の を求めよ。
と D1 は並列、 と D2 も並列。並列なら両端電圧が等しいので、 ダイオードの電圧降下が決まれば並列抵抗に流れる電流もすぐ決まる。 全体の電流は「 にかかる電圧 」で出し、そこから抵抗側の電流を引いた残りがダイオード電流。
理想ダイオードは順方向で電圧降下ゼロ=短絡と等価。したがって も も 両端が短絡されて電流が流れず、回路に残る抵抗は だけ。
mA
まず A 点の電位を出す。電源から D1( V)と D2( V)を通って降下するので
を流れる総電流は
には D1 と同じ V がかかるので
同様に には D2 と同じ V がかかるので
mA、 mA
ダイオードと並列の抵抗を「無いもの」として扱うのが最頻出の誤答。 理想ダイオードのときだけ短絡されて電流ゼロになるのであって、電圧降下があるときは その電圧が並列抵抗にもかかって必ず電流が分かれる。 また になる理由も「途中で に分流するから」と説明できること。
問題4(各2点 計10点):○×
令和8年度 中間 問題4(10点)
下記の文章において合っている場合は○、誤っている場合は×を書け。
バイポーラトランジスタのコレクタは不純物濃度が他の端子より多く製造される。
半導体の動作は基本的に n 形半導体の方が高速である。
回路素子を集積化することによって寄生容量が減少し、動作速度は減少する。
npn トランジスタはコレクタとエミッタを逆に接続しても動作には問題がない。
電子密度 /m の真性半導体に不純物を添加した場合に、電子密度は /m となった。このときのホール密度は、おおよそ /m である。
**1. ×**濃度がいちばん高いのはエミッタ。 の順。 エミッタから大量のキャリアを注入するために濃くする。コレクタを濃くすると耐圧が下がって不都合。
**2. ○**電子の移動度はホールより大きい(Si でおよそ3倍)。 多数キャリアが電子である n 形の方が同じ電界で速く動けるので高速。
**3. ×**前半は正しいが後半が逆。集積化して素子を小さくすると寄生容量が減り、 充放電が速く済むので動作速度は増加(高速化)する。
**4. ×**npn は構造が対称ではない。エミッタは高濃度・コレクタは低濃度で幅も違うので、 逆接続すると電流増幅率が大幅に落ちる(逆活性動作)。
**5. ×**質量作用則 を使う。真性のときの値が なので
正しくは /m。指数が違うので×。
5番は指数だけをすり替える典型的なひっかけ。数値の頭()が合っているので油断しやすい。 は必ず自分で割り算して指数まで確認する。 、 なので 。
問題5(各2点 計10点):RCフィルタ
令和8年度 中間 問題5(10点)
図に示す RC フィルタ回路において次の問いに答えよ。数値問題は有効桁2桁の小数で解答すること。
この回路は、LPF か HPF か答えよう。
カットオフ角周波数 (rad/s) をグラフから読みとって答えよう。
いま k である。 の値を求めよう。
ゲイン dB のときの入出力の位相差を弧度法の角度で求めよう。
コンデンサ をインダクタンス mH に取り替えた。このときのカットオフ角周波数 (rad/s) を計算しよう( k)。
が直列・ が並列で、出力を の両端から取っている。 は高周波ほど通しやすい=インピーダンスが小さいので、 高周波では出力が小さくなる。グラフも右下がり。よって
LPF(低域通過フィルタ)
カットオフはゲインが dB になる点(振幅が )。グラフでその高さを横に見ていくと
rad/s
LPF のカットオフは なので
F
まずグラフで dB になる を読む。 より十分高い側は dB/dec なので、 dB の点()から dB まで約 dec 上がった rad/s。
LPF の伝達関数は 。位相は分母の偏角の符号を反転したものなので
rad(約 の遅れ)
の位置に を置くと、出力は の両端。 は高周波ほど通しにくいのでこんどはHPFになる。
カットオフは大きさが になる 。両辺を2乗して
rad/s
(5) は「 を に替えると LPF が HPF に変わる」のがポイント。 カットオフの条件は毎回同じで、抵抗成分とリアクタンス成分の大きさが等しくなるところ ( または )。公式を丸暗記せずこの条件から立てれば、 どの組み合わせでも導ける。位相の符号はLPF は遅れ(マイナス)、HPF は進み(プラス)。
過去問完全演習:令和7年度 電子回路A 中間試験
令和7年度の本試験。問題1〜6のうち5問を選択して解答する形式(各大問の配点はタイトルに明記)。 以下は全6問の完全解答。選択するなら、計算が一本道の問題2・問題5と語句で確実に取れる問題1・問題4を優先し、 残り1問を問題3(マス埋め)か問題6(記述)から選ぶのが安全。
知らない言葉が出たらここに戻る。
ホール(正孔):電子が抜けたあとの「空席」。プラスの電気をもった粒のように動く(電子が右へ動く=空席が左へずれる)。
キャリア:電気を運ぶ粒のこと(電子とホール)。多数キャリア=主役(数が多い方)、少数キャリア=脇役(少ない方)。
ドナー:n型を作るために混ぜる、電子を1個あげる不純物(V=5族, ヒ素Asなど)。 アクセプタ:p型用の、電子を受け取って空席(ホール)を作る不純物(III=3族)。「混ぜる」ことをドープという。
エネルギーバンド図:電子が居られるエネルギーを上下の「階」で描いた図。上の階=伝導帯(電子が自由に動けて電流になる)、 下の階=価電子帯(電子が原子につかまって動けない)、その間の電子が居られないすき間=禁制帯(バンドギャップ)。
熱励起:熱エネルギーをもらって電子が下の階から上の階へ飛び上がること。
フェルミ準位 :電子の詰まり具合を水に例えたときの「水面」の高さの目安。
ツェナー降伏:逆向きの電圧を強くかけると急に電流が流れ出す現象の一種(電子が薄いカベをすり抜けるトンネル効果で起こる)。
問題1(穴埋め・各1点 計8点):半導体とバイポーラトランジスタ
令和7・問題1
半導体は大きく、真性半導体・p型半導体・n型半導体に分類される。n型半導体はSiで構成された真性半導体に (a) 族の元素を約 (b) %混入することで形成され、多数キャリアは (c) である。 バイポーラトランジスタは3つの端子をもち、その名前を (d) ・(e) ・(f) という。 ただし (d) は他より十分薄く、(f) は多数キャリアが十分大きくなるように製造される。 小さなベース電流で大きなコレクタ電流を制御でき、その割合を と呼び、おおよそ (g) 倍である。 直流バイアスではエミッタ–ベース間がダイオードと等価とみなせ、(h) 方向バイアスとなるよう印加する。
解答:
| (a) | V(5)族(ドナー, As等) | (e) | コレクタ(collector) |
| (b) | 約0.01% | (f) | エミッタ(emitter) |
| (c) | 電子(自由電子) | (g) | 約100(例 で ) |
| (d) | ベース(base) | (h) | 順(forward) |
n型はV族(5価)のドナー(=電子を1個余らせる不純物)をごく微量(程度)混ぜて作り、電気を運ぶ主役は電子。 端子名は(d)が「うすく作る」=ベース、(f)が「電気を運ぶ粒をうんと多くする」=エミッタ、残りがコレクタ。 で、 なら 。EB間はダイオード等価で順方向にバイアスする。
問題2(各2点 計8点):結合C付きダイオード小信号回路
令和7・問題2
下図の回路で次に答えよ。V, , 、は十分大きい、 交流電圧源 は より十分小さいと仮定し、ダイオード特性は右図の通り。 は直流に対して開放、交流に対して短絡とみなせる。
(1) 直流等価回路の回路方程式から負荷直線を引き、動作点電流 を求めよ。 (2) 交流に対する動作抵抗 を有効2桁で(J/K, K, C)。 (3) 交流等価回路を描け。 (4) の電圧を出力としたときの交流ゲイン をdBで有効2桁で。
結合 があるので直流→C開放/交流→C短絡で分けて解く。直流で動作点(=ダイオードが落ち着く電流・電圧の組) と 動作抵抗 (=小さな信号に対してダイオードがどれだけ抵抗に見えるか)を出し、 交流ではダイオードを 、直流電源 と を短絡に置き換えて増幅率を計算する(本編§9と同じ一本道)。 負荷直線=回路の式 を特性グラフに重ねた直線で、特性曲線との交点が動作点。
残るのは –ダイオード– の直列。回路方程式は
これが負荷直線(でmA、V で)。特性曲線との交点を読むと
動作点 ,(読み取り誤差は許容)。
(2) 動作抵抗。
(有効2桁)。
– の直列の先にとが並列でぶら下がり、 はその並列部(両端)の電圧。
まず並列合成と全直列抵抗。
電流 、出力は並列部の電圧 だから
(有効2桁)。
直流で を外すのを忘れない(負荷直線が だけで決まる)。 は動作点 の電流で計算(Kなので mV/ ではなく をそのまま代入)。ゲインは より小さい()のでdBは負になる。
問題3(各マス1点 計8点):ダイオード論理回路(AND)
| 出力(単位:V) | ||||
| (降下0V) | ||||
| (降下0.7V) | ||||
| 0 | 0 | 10 | 0 | 0.7 |
| 0 | 10 | 10 | 0 | 0.7 |
| 10 | 10 | 10 | 10 | 10 |
| 5 | 5 | 5 | 5 | 5.7 |
Vからプルアップ抵抗 で持ち上げた共通ノードに、各入力へ向けてダイオード(アノードが共通ノード側)がつながる。 最も低い入力につながるダイオードが導通し、共通ノードをその最低入力+ダイオード電圧降下 にクランプする(AND=最小値回路)。
(): . (): .
「入力が全部Vなのに、出力がV?」という疑問への答え。 ポイントはダイオードは導通中も「ただの導線」ではないこと。電流が流れていても、アノード側はカソード側よりV高いまま保たれる。
このANDゲートではアノード=共通ノード(出力)側、カソード=入力側。だから出力ノードは入力よりV高い位置にクランプされる。 電圧を一歩ずつたどると:
Vからの電流は と流れる。 出力ノードがVに達するとダイオードが導通してそこで止まる(それ以上は上がれない)。残りの V はが引き受ける。
ダイオードを理想(電圧降下V)とみなすと、出力=入力=Vになる(これが左の列 )。 実際のダイオードはV落ちるので、そのぶん出力がV高く持ち上がってVになる。 「降下するなら下がるのでは?」と感じるが、降下するのはダイオードを通り抜ける向きの話。出力ノードはカソード(入力)から見てアノード側=高い側なので、V高くなる。 (出力が入力より下がるのはOR回路の話。OR回路はダイオードの向きが逆で「最大入力V」になる。混同しないこと。)
3行目・4行目を ()としてしまう。 ANDのダイオード降下は出力を最低入力よりV上げる(下げない)。
3行目は全入力がV=供給と同じなのでどのダイオードも導通せず(Vは供給を超えられない)、出力はでプルアップされてVのまま。 4行目は V。OR回路(最大値)と混同しないこと。
問題4(○×・各2点 計8点)
| 文 | 正誤 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | ツェナー降伏(逆電圧で急に電流が流れ出す現象)は不純物を混ぜた量が多いほど、キャリアのない層が薄くなって電気の力(電界)が強まり、低い逆電圧でも起こりやすい。 | |
| 2 | ホール(正孔=電子の「空席」)はちゃんと存在する(プラスの粒のように振る舞う)。しかも動きやすさは電子より小さく、ふつう電子より遅い。文は二重に誤り。 | |
| 3 | ON電圧(電流が流れ始める電圧)は温度が上がると下がる(約mV/C)。「温度が下がると下がる」は向きが逆。 | |
| 4 | 部品を小さく詰める(集積化)と、配線どうしが勝手に作る小さなコンデンサ(浮遊容量)が減り、配線も短くなるので信号の遅れが減り応答が速くなる。 |
の文は「どこが誤りか」を一言で言えるように。2は「存在しない/質量ゼロ/電子より速い」が三重に誤り、 3は温度依存の向きが逆。1・4の○は理由(濃度↑で降伏しやすい/集積化で速くなる)まで押さえる。
問題5(各2点):RCフィルタ(HPF)とコイル置換
令和7・問題5(k)
(1) この回路はLPFかHPFか。(2) カットオフ周波数 をグラフ(rad/s)から読み取れ。 (3) の値を求めよ。(4) を mH に取り替えたときのゲインの周波数特性をグラフに示せ。
(1) が直列・が並列(出力は両端)。低周波でが高インピーダンス→通さない、高周波で通す。よってHPF(高域通過)。
(2) グラフより rad/s。
(3) HPFのカットオフは 。 だから
.(単位に注意:F ではなく F)
(4) にすると直列・並列=LPFに変わる。伝達関数と振幅は
新しいカットオフは すなわち
グラフはでdB平坦、rad/sでdB、それ以降dB/decで下降(上図オレンジ線)。
(1)は直列素子で判別:直列がならHPF、直列がならLPF(高周波でが効いて遮断)。 (3)の単位ミス(忘れ)は頻出。(4)は→でフィルタの種類が反転し、 になる点が山。
問題6(6点):真性半導体で をバンド図で説明
真性半導体(=不純物を混ぜていない純粋な半導体)には電気を運ぶ粒がもともと無く、 熱をもらって電子が下の階(価電子帯)から上の階(伝導帯)へ飛び上がったぶんだけ電流を運べるようになる。 このとき電子が1個上がると、もとに居た場所に必ず「空席(ホール)」が1個できる。 電子とホールは必ずペアで生まれるので、上に上がった電子の数 と下に残ったホールの数 は常に等しい:
電子の詰まり具合の「水面」(フェルミ準位 )も、上下の階のちょうど真ん中にくる。
言いたいことは1つ:「電子が上の階へ飛び上がると、下に空席(ホール)が必ず同じ数できる=ペアで生まれるから 」。 図には上の階・下の階・すき間 ・水面 を描き、飛び上がる電子(上)と残る空席(下)を矢印でペアにして示せば満点。
ドリル(全問解説つき)
D1(dB)
2段増幅器で1段目倍、2段目倍。総合電圧利得を倍率とdBで答えよ。
倍率は積 倍。dBは和:。 (dBと一致。電圧利得なので係数は20。電力と間違えない。)
D2(フィルタ)
, のLPFのカットオフ周波数を求めよ。この回路は何を除去するか。
。 LPFなのでより高い周波数(高周波ノイズ)を除去し、低周波を通す。でゲインはdB、位相は。
D3(半導体)
n型Siにドナーを添加。多数・少数キャリア密度を求めよ。。
多数キャリア(電子)は 。 少数キャリア(ホール)は質量作用則 から 。 少数キャリアは桁違いに少ない。温度が上がるとが増え、少数キャリアも急増する。
D4(LED)
のLEDの発光波長を求め、色を答えよ。, 。
。Eをジュールに直して計算。
エネルギーが大きい(=が大きい)ほど波長は短く青寄り。「青色LEDの実現=大きいの結晶化が難しかった」が2014年ノーベル賞。
D5(整流)
振幅Vの正弦波をSiダイオードで半波整流したときの出力ピーク値は? 全波整流+平滑コンデンサにする利点は?
出力ピークは (順方向降下V)。 全波整流(ブリッジ)は正負両方の半周期を使うので脈流の周波数が2倍になり、平滑コンデンサで充放電すると リップルの小さい滑らかな直流が得られる(AC/DC変換)。
D6(トランジスタ)
あるnpnトランジスタでベース接地電流増幅率。エミッタ接地電流増幅率を求めよ。 またAのときとを求めよ。
。 。 (または mAでも一致)。 (ベース接地, )と(エミッタ接地, 数十〜千)を取り違えない。
D7(小信号・結合C)
No.3-26の回路(V, , , , )で、 直流の動作点と動作抵抗、および交流でのを求めよ。
直流は開放でを外し、。 。交流は短絡でとが並列: 。これを使うと V。 直流→C開放/交流→C短絡。直流電源は交流等価回路では短絡する。
ドリル
固定バイアス回路( V、 k、 k、、 V)の を求めよ。
電流帰還バイアス回路で V、 k、 k、、 k のとき、 を求めよ。また の概算値を dB で示せ。
k、、 k のエミッタ接地増幅回路で、 が交流的に接地されているとき(バイパスコンデンサあり)の とベースから見た を求めよ。
k、、 k のエミッタフォロワの と を求めよ( は無視)。
次の用途にはどの接地方式が適するか。理由も1行で。(a) センサの微弱信号を受けたい(前段から電流を奪いたくない) (b) のスピーカを駆動したい (c) 高周波で電圧を稼ぎたい
**1.**ベース側のループは なので
動作点は活性領域の中央付近でよいが、 が から に変われば も倍になり が V まで落ちて飽和する。これが固定バイアスの弱点。
**2.**ベース電流を無視して分圧。
ただし V は V より低い。 となり このトランジスタは飽和してしまっている。設計としては失格で、 を下げるか を上げて を減らす必要がある。逆算して仕様を確認する工程がなぜ要るかがよく分かる例。
3. が交流的に短絡されているので の式を使う。
ありのとき()と比べて増幅率は跳ね上がるが、 がそのまま式に残るので個体ばらつきの影響を直接受ける。 も k と低い。
4.
入口は k で軽く、出口は で力持ち。 のスピーカもぎりぎり駆動できる。 これがインピーダンス変換の数値的な意味。
5. (a) コレクタ接地。 が最も高く、前段から電流をほとんど奪わないため。 (b) コレクタ接地。 が最も低く、軽い負荷でも電圧が落ちないため(電圧は前段のエミッタ接地で稼ぐ)。 (c) ベース接地。電圧増幅率が大きく、かつ周波数特性が良いため。
試験直前の見直しリスト(全範囲)
dBは電圧/電流、電力、常用対数。、 dB。
LPF/HPFの を から自力で導出。。
ボード線図:LPFは dB/dec、HPFは dB/dec、折れ点で dB・。
半導体:多数/少数キャリア、、温度↑で抵抗↓。穴埋め語句(空乏層・内蔵電位・整流・降伏)も。
空乏層の固定電荷はn形=正、p形=負。どちら側の話かで決める。
ダイオード: V降下、整流、負荷直線で動作点、。
結合C付き回路は直流→C開放、交流→C短絡で分けて解く。直流で →交流で増幅。
ダイオードと並列の抵抗は電圧降下があれば必ず電流が分かれる(無視しない)。
トランジスタ:、ベース薄く、EB順・CB逆、、。
直流の問題か交流の問題かを最初に判定する。直流ならCは開放、交流ならCも直流電源も短絡。
交流等価回路で と を並列にしたか(片方だけ書いていないか)。
エミッタに流れるのは ではなく 。 の を落としていないか。
にバイパスコンデンサがあるかないかを回路図で確認。あれば 、なければ残す。
エミッタ接地の にはマイナス(逆相)。コレクタ接地・ベース接地は同相。
クリップ計算では、コレクタが下がるぶんとエミッタが上がるぶんを足す。
実効値か振幅かを確認してから電力を計算する。
負荷直線は2つの切片を書いてから引く。答案に直線の式を残す。
動作点は活性領域。飽和領域に置かない。
数値問題は有効桁2桁。単位(A / mA / k / dB / mW / rad)を必ず付ける。
dB換算を忘れない。 や を「dBで」と指定されていないか読み直す。
E6系列に丸めたら必ず逆算して仕様を再確認する。
記述問題は結局なにが言いたいかを一文で言い切る。定義語を並べない。
出典
電子回路A 講義スライド(及川大 先生、豊田工業高等専門学校 電気・電子システム工学科)
1_Filter:dB表示・RCフィルタ・ボード線図・BPF・フィルタ設計2_Semicon:半導体分類・真性/p/n形・バンド図・温度依存3_Diode_part1〜3+補足:pn接合・空乏層・整流・I-V特性・降伏/ツェナー・LED・論理回路・負荷直線・小信号等価回路・結合C演習・多ダイオード回路・過去問穴埋め4_Trans_part1,2:トランジスタの分類・拡散長・npn構造と動作原理・回路記号と型番・電流増幅率・接地法・エミッタ接地静特性・増幅回路の原理・負荷直線と動作点・入出力波形5_Emitter_com:1電源バイアス回路・エミッタ接地増幅回路(電流帰還型)・設計手順1〜9・E6系列6_h_parameters_part1,2:小信号等価回路・T型等価回路・hパラメータ・エミッタ接地/コレクタ接地/ベース接地の小信号解析・電力増幅回路・3接地の比較
令和6年度 電子回路A 期末試験(及川大 先生、令和6年7月29日)および解答 ── 全7問を収録
令和8年度 電子回路A 中間試験(及川大 先生、令和8年6月24日)および解答 ── 全5問を収録
令和7年度 電子回路A 中間試験(選択5問形式)および解答 ── 全6問を収録
※配布資料に定期テストの出題範囲を明記した文書は含まれていなかった。本プリントは 中間試験の範囲も定期テストに含まれるという前提で、年間の全単元を1冊にまとめている。